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子供って無限大の可能性をもっているんですね


 

吉川 由美江 (Yumie Yoshikawa) さん (ピアノ講師、演奏家、作曲家

東京-中野区生まれ、所沢育ち。 6人兄妹の次女、3番目に生まれる。6歳からクラシックピアノを習う。
東京音楽大学入学、ミューズ音楽院卒業。 プロ・バンド=元ZELDA*のギターリスト石原富紀江の結成したバンド「リップ・スティックス」のメンバーとして、原宿ルイード*で約1年間毎月ライブ活動等を行う。 脱退後、クラシックピアノに再び熱を入れる。
日本では、松本佳子と山本矩子(巨匠=松浦豊明*の弟子)に師事。
アメリカでは、オハイオ州ウィルミントン大学のジム・ロバート・ハスキンス教授に師事。
1999年9月に渡米。渡米後直ぐにオハイオ州シンシナティでプライベートで何人かの生徒にピアノを教え始める。
2年後にケンタッキー州へ移る。ケンタッキー州レキシントン市のイタリアンレストランで数年ピアノ演奏者を務め、
クラシック以外のピアノ曲やジャズ等を学んだ。
その頃、徐々に口コミで生徒が増えた為にレストランの演奏者を辞め、現在はピアノ講師が本業。
自宅でピアノ教室を運営する傍ら、更なる英語力向上のため大学でクラスを受講する。
コンクールでは教え子たちを見守り、多くの入賞者を育成/指導中。

そんな私も、少し前までは、英語がこんなに必要になるとは想像もしていませんでした。 
子供の時には、一切英語を習ってこなかったため、後悔は好きではないのですが、「もし、ちゃんとした英語教育を子供のうちから受けていたら」とか、「日本の英語教育がもっと良かったら」とか、そのようなことが常に頭を駆け巡ります。学校の英語の授業も殆ど赤点ぎりぎりで、そこまで英語という科目を重要に感じていませんでした。英語に対する重要性の意識が日本は他の国と比べて低いと感じます。それはアメリカで出逢った日本人以外の人種と接してると分かります。     
レキシントンにはトヨタの工場もあり、小都市の割りに日系企業が結構多いため、日本からの駐在員の子供達をよく指導していますが、子供の英語習得の早さには、驚き以上に羨ましささえ感じます。子供って無限大の可能性をもっているんですね。しかし、誰もがこういった幼少期に、海外に住めるチャンスに恵まれる訳ではありません。

では、出来るだけ若いうちに、つまり、幼少期に英語教室などに通いさえすれば良いかというと、答えはYES and NOです。もちろん、若い時期から始めるのは良いことなのですが、きちんとした指導を心掛けているところでなければ意味が無いと思います。

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英語(言葉)とピアノ(音楽)には共通する部分が多いです。それは恐らく音楽も言葉と同じく一種のコミュニケーション手段であるからだと思います。
英語やピアノに関して大人になってからよく聞くのですが、
「折角子供の頃に習ってたのに、今思うとあまり良い指導を受けれていなかった。良い指導を受けられていたら人生もっと違っていた」とか、「うちの親がもっとよく調べて考えてくれていたら良かったのに」という後悔のお話です。
日本の大学で英文科を卒業した人でさえも、こちらへ来て苦労している方も少なくありません。それは恐らく総合的なバランスの良い学習内容で学べていなかったことに原因があるのではないかと思います。
例えば、私の世代では、多くの英語教育機関での学習内容の中心が"書くこと"に集中していたということはよく耳にします。その反動か、近年では耳に重点を置いた教材が注目されたり、会話主体といった教室も増えています。

しかし、実際にアメリカに住んでいると、話す、読む、書く、聞くの全てが不可欠です。この事は、ご自身の母国語で例えて考えてみると想像が付くと思います。ピアノにも共通していて、弾けるだけだったり、耳のみ集中して鍛えたりする学習法も見かけますが本当にそれで良いのでしょうか。

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ここで、数ヶ月前に、日本で師事した山本矩子先生から頂いた、お手紙を引用いたします。

"言葉と同じで本当に知るには、多方面を知らなければなりません。 会話が出来て、読めて、聞けて、書けなければ文盲のようなものでしょう。 楽器が弾けて、譜が読めて、書くことが出来なければ、浅い知識に過ぎません。 程度は弾く程でなくとも、ソルフェージュ(歌詞無しで楽譜を唄う、そして耳で聞いた音譜を書くこと)の四つ=話す、読む、書く、聞く、は大変重要なことです。"

 

 以上の事からピアノや英語(言葉)を習うのなら、やはり総合的な学習内容で学ぶのが理想です。
そのことから、ピアノも英語も最初に門を叩く場所が非常に重要になってきます。
私は地元の音楽講師協会の先生方から、「導入期&小さい子供の専門家!この辺でベストだ!」(恐縮ですが)といった評価を頂いているので、どこかで既にピアノを習っていたけど、上達が思うようにいかないと悩んでいる生徒が私のところへ回されて来たりします。

それらの生徒達には、可哀想に思う場合が多いのです。それは上達出来て無い原因が明らかに子供の才能うんぬんの問題ではないからです。勿論、3~6歳前後の子供の進度には大きな個人差があって、中にはゆっくりとしたペースの子もいて当然なのですが、それにしても上達どころか導入期に徹底されるべき最低限の総合的基礎が、ろくに指導されてない状態です。悪い癖を付けるのは簡単ですが、その癖を直すのには時間も掛かり厄介です。
先ず揃って皆譜読みが苦手=指導されて無い=出来ていないのです。音符に講師の字でドレミ/CDEのカナが書いてある状態で音符も作曲家の指示も読めてないのに、結構難しい曲をやらせてる形跡があります。ソルフェージュ*の指導は殆ど無いです。保護者の方も何も気付かなかったのか、ただちょっと弾けるようになってるから安心してしまったのかもしれませんが講師と生徒&保護者間のコミュニケーション不足が伺えます。アメリカは日本より、コミュニケーションに重点を置いてます。指導者と生徒と保護者の良い関係が生徒の成功の鍵ともなるので、誤解が生じないようお互いを理解+尊敬するべく歩み寄る事も大切に思います。 

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先ずは良い教室/講師探しからです。
ここで妥協するかしないかで本人の将来が大きく左右することにもなります。教室/講師とは、ある意味「お医者さんのようなもの」です。そう考えると値段と距離と質の全てを求めるのは難しいです。しかし一番大切なのは「質」です。
それと保護者の方の中によく見受けるのが、「うちの子には才能が無い」といった誤解です。大抵の才能は環境と大いに関ってきます。本人にいくら才能があったとしても良い環境に恵まれなければ開花出来ないと思うのです。私が思うに、良い環境とそれなりの良い指導者に習うという条件が整うと、才能に恵まれなかったとしてもそれなりのレベルまで到達出来るのです。(それも一つの才能であると思いますが) 幼少期の子供の可能性には計り知れないものがあります。どんな子供もそのような可能性を持ってます。ですから、この時期の重要さは認識しておかなければなりません。

また、保護者のサポートがいかに大切かに気付いていない方もいらっしゃる様です。これからの時代は、指導者側からも気付かせてあげるのが良いのかもしれません。 子供には「欲」があまり無いので、講師側のみに任せっきりでは興味を持続させるのが難しいです。ピアノならコンサートに連れて行ったり音楽やピアノがもっと出来るようになりたいと思わせる工夫をすることです。英語なら、洋画を見に行ったりして、英語が出来ると凄いなとか、ステキだなとか英語を役立てる環境を配慮してみることです。「好きな気持ち」や「興味」以上のやる気のエッセンスはありません!
ある保護者の方の中には、子供に「練習しろ/勉強しろ」とさえ言っていれば良いと思われてる方もいます。そうではなく「子供の頑張ってることに関心を見せるべきです」 子供を上から目線でなく、子供が頑張ってることに興味を寄せ、一緒になって頑張るくらいの姿勢が大切です。2009年度バン・クライバーン国際ピアノコンクールで見事に全盲で日本人初優勝をして話題になった、辻井伸行さんのお母様の子育てについてのメールセミナーにも多くのヒントが書かれてます。
(辻井いつ子の子育て広場:http://kosodate-hiroba.net/) 

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保護者の方が一緒に練習や勉強に付き合ってあげる事をお勧めします。個人差があって、子供によっては中学生くらいまでは必要かもしれません。後できっと子供から感謝される事と思います。
〝決して自分の子供より出来る子と比べないこと!比べるべきなのは本人自身とです!"
その子なりのペースがあります。進度が遅いとか粗探しはせず、良い部分を見てどんどん伸ばしていくべきです。保護者の方の影響は子供に大きいのです。そんな大きな存在に日々憂鬱な気持ちで横に居られたら、子供にも当然良くありません。又、実際上達していても"目に見えない上達"というのもあるので勝手に決め付けては大変です。
最近の保護者の方にありがちなのが、「待つこと」がちゃんと出来ないのです。いくら良い指導者に習えたとしても、それだけでは本領を発揮出来ません。『講師-生徒-保護者』の、この3つがちゃんと機能して、はじめて本領を発揮するものなのです。
日本の根性論も良いですが、あまり長時間の辛い練習/勉強に目標を置かないで、「効率の良さ」=「いかに時間を掛けずに出来るようにするか」が理想です。又、「お金が勿体無いからやめろ」と言うのは、ある意味で逆にも取れます。折角今まで時間とお金を掛けて習得してきたことを、全て無駄にすることになるからです。少しずつでも続けてれば、全く止めてしまうよりは忘れることを防げます。そして数年後に、いきなり自発的に練習に励むようになるということも少なくないのです。そう、才能もいつ開花するか分かりません!
  〝止めることはいつでも簡単に出来ます!『継続は力成り』で続けることに意味があるのです"
最も残念に思うのは、保護者の勝手で子供に習わせておいて、保護者の都合でやめさせるケースです。特に英語やピアノで、これは意外と多いのです。子供が可哀想です。

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私は日本で義務教育で6年間英語の授業を受けてきましたが、渡米直後は英語が全く駄目でした。
しかし人生は1度きりです。なので「諦めるより少しでもやってみよう」と自分に思い聞かせて現在までやってきたので、英語が多少は出来るようになってきてます。アメリカの生活で大変だと感じることもありますが、今回このエッセイを書くことで改めて考えてみると、大変でもこうしてアメリカで英語が学べていける環境に良かったと感じます。

 英語がもし全く出来なかったら、全米音楽指導者協会/MTNA=Music Teachers National Associationの会員にもなれなかったし、折角アメリカにいながら日本以外の文化を知ることも出来ていなかったと思うのです。多少出来れば色んな人種と出逢い、それぞれの国で流行ってる音楽や民族音楽などが知れたり、自分の音楽への影響も大きいです。

私の通う大学の英語のチューターの中にハンガリー出身の人がいて、彼女とハンガリーのソルフェージュ教育の事情やリスト、バルトークやコダーイ(ハンガリーを代表する作曲家)の話で盛り上がったり、またそこに新たな発見や学びもあります。特に私が自分の生徒にコンクールでハンガリーの作曲家の曲を弾かせたと伝えると、大喜びします。

音楽は世界中の人々と分かり合えるものなのです。なので日本語のみの情報に頼るのは、やはり狭い世界で偏ってしまうと思うのです。特にピアノを教える立場の人は、英語は最低ある程度出来た方が良いと感じます。それは、教える側は常に広く色々と知っていることが不可欠になるからです。英語が出来なくても日本語訳されてる専門書に頼れるからと安心していませか?
実際にアメリカで良書とされてる本でも日本語訳されてない物が結構あります。ピアノの導入期の教材も最もポピュラーな物が日本語版でなかったりするのです。これはピアノに限らず全ての分野においても同じことが言えるのではないでしょうか。
そう考えると、何か極めたい方や専門的な勉強をされてる方はやはり英語が出来た方が知識の幅が広がると思います。渡米当初、未だTVやニュースを理解出来なかったのですが、徐々に分かるようになってきて日本のニュースや考え方、情報等とこちらでの情報とにズレや温度差を感じる事もあります。面白いことにアメリカ人以外の人種と話すと、またそこに更にズレがある何てことも。でもそれを知ることが出来るのも英語を通してコミュニケーションが出来るからなのです。

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私は自分の生徒達の演奏をYoutubeにアップしてますので、各国の方々から、色々なメッセージをいただいています。 ドイツ、フランス、アメリカ、イタリア、アイルランドetc. のピアノ講師をはじめ、世界中の方々と情報交換をしています。 
そして小林愛美ちゃん*のスポンサーからもコメントを頂いています。
"Are you specializing in very young children? You get incredible results!!!"
Byパトリックさん Fromフランス
勿論、Youtubeではどの国の方とも英語でやり取りしています。

*「小林愛実ちゃん」は日本が誇る若き天才少女ピアニストで、徐々に世界中に人気が広まってます。
(参照:kobayashiaimi.pdf)

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英語の凄い所は、ほぼ全世界の人々とコミュニケーションが可能な事です。
そんな私の現在の目標は、仕事やあらゆる面で使える英語力のレベルアップです。そうしなければこれ以上世界が広がらないと考えています。
仕事上、地元オーケストラのコンサートのレセプションに招かれ、世界的に活躍するピアニストと会える機会が時々あるのですが、そんな時、「ああ、もっと流暢に気の利いた話が出来たら、どんなに有意義な会話をすることが出来るのだろう」と落ち込んだりします。アメリカ人の生徒に対しても、英語がもっと出来たら、更に良い例え話や助言をたくさん出来るだろうにと申し訳なく思ったりもします。しかし、私よりずっと英語が堪能でも生かせて無い方もいます。
やはり語学力以前に、一人の人間として色々経験して自分を磨く事も大切だからなのかも知れません。そして海外を知るには日本をもっと知らないといけません。日本人以外の人から聞かれるのは先ず「日本の事」なのです。そうです、英語を学ぶことは祖国をもっと知ることが出来るきっかけにもなるのです。

最後に私からのアドバイスとして、
英語も音楽と同様に、出来るだけ総合的な学習内容でバランスよく学ぶ事を念頭に置き、独学よりも良い学校や講師から習う事をお勧め致します。折角、時間とお金を掛けるのですから後悔の無いように頑張って下さい!大人であっても今からでも決して遅くありません!

[参照]

*ZELDA

1.http://74.125.47.132/search?q=cache:T4vbo1GBvB8J:ja.wikipedia.org/wiki/ZELDA+%E7%9F%B3%E5%8E%9F%E5%AF%8C%E7%B4%80%E6%B1%9F%E3%80%80zelda&cd=2&hl=ja&ct=clnk&gl=jp

2.http://74.125.47.132/search?q=cache:yVUr9o2wXOAJ:en.wikipedia.org/wiki/Zelda_(band)+%E7%9F%B3%E5%8E%9F%E5%AF%8C%E7%B4%80%E6%B1%9F%E3%80%80zelda&cd=58&hl=ja&ct=clnk&gl=jp

*原宿ルイード
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8E%9F%E5%AE%BFRUIDO

*松浦豊明
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%BE%E6%B5%A6%E8%B1%8A%E6%98%8E

*ソルフェージュ
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BD%E3%83%AB%E3%83%95%E3%82%A7%E3%83%BC%E3%82%B8%E3%83%A5 

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